MIHOLO’s 図書室

本と音楽、たまに猫の雑記

人生の道しるべ

宮本輝さんと吉本ばななさんの対話集。

 

吉本ばななさんといえば有名なのは「キッチン」

大学生くらいのころかな。映画化もされてたけど。

その頃は、まったくよくわからなかった。

世間から絶賛されているものがわからない自分も嫌だったから

それ以降もあまりばななさんの作品を読んでこなかった。

 

でも最近、読み返して本当は自分が全然読めてなかっただけだとわかった。

 

実を言えば、宮本輝さんの有名な「錦繍」もやっぱり、よくわからなかった。

登場人物に起きた事件は三面記事になりそうな酷い話だけど、文章が綺麗だから

なんだか素晴らしく感じるだけなのではないか?とか。ごめんなさい。

 

こちらも近年、作品を色々読んでいたら(特に「流転の海」シリーズ)

ものすごくファンになってしまった!

 

そんな読めず後悔から始まった2人の対話集なので、期待して読んだ。

 

輝さんの「まえがき」の司馬遼太郎さんが語っていた

「あいつは初期の頃より堕落した、ハングリーでなくなった、

瑞々しさを無くしたとか、世の人びとは芸術に携わる人に酷な事を言う。

でも、実は何も変わってない。絵画、文学、音楽の世界で自分の作品を創り続けて来た人は変わらない。

ただ、長い年月のうちには技術の変化や考え方の揺れは当然あるが、根本的には変わらない」

という言葉に輝さんも

「逆の言い方をすれば、変わらないものを持っている者だけが

画家、作家、音楽家になることができたのだ」と言っている。

 

人間の本質なんてそう簡単に変わらないよね。

確かに経験値は上がって、なんだか成長した気がして、自分は昔とは変わったと錯覚するけど、

根本的には変わらないし、変わらなくても自分のなりたい自分でいられるのなら、

それで充分なのかもしれない。

 

ばななさんの「あとがき」に

みんなが本を読まなくなって、日々はやたらに忙しく早い回転ばかりを求められ、

ゆっくりものを眺める時間もなく、短時間のひまつぶしには満ち溢れているこの時代の中で

「深く考えちゃだめだよ」「そうしたら苦しくて損だよ」と言われているような気持ちになることが多い。

そういう傾向は私が若い頃からもちろんあったけれど、いまはもう常識になってしまった。

でも輝さんは「それは違うんだ」とはっきり示してくれる。

人生を真っ向から生きることで得られるもののなにものにも代えられない宝物のことを、

常にぶれずに迷わずに話してくれる。とあった。

 

輝さんが2人の言葉のやりとりだけでは表にあらわれにくい含意にまで

「読み」の力を傾けていただければ幸甚であると書いてあった。

 

字面だけを追って「読んだ」としていた私の読書も、含意を考えて読めるようになれば、

今までわからなかった本の数々もわかるようになるかな。

わかるようになりたい。