浅水湾(リパルスベイ)の月
1980年代後半から90年にかけて、多分一番読んだ作家だと思う。
森瑤子さん。
でも、今手元に残っているのは数冊しかない。
しかも沢山読んだのに、覚えているものは少ない。
後半は大量に出版されていたけれど
似たような文章が多くなって、がっかりしたくなくて読まなくなった。
最近、島崎今日子さんが書いた「森瑤子の帽子」を読んで懐かしくなった。
大量に書かねばならなかった訳も納得したし、切なくなった。
それはまた改めて書こう。
先日、沢木耕太郎さんの「旅する力」を書く時に、
無性に、深く印象に残っている「浅水湾(リパルスベイ)の月」が読みたくなった。
私は香港への渡航経験もないし、空気感も知らないんだけれど
埃と湿気のむせかえるような、はりつくような、混沌とした感じが文章から
沸き立ってきて、そうこれこれと最初に読んだ時のことを思い出した。
主人公のロレッタと、偶然会ってしまうモニクのシーンが好き。
最後の終わり方は(それも読む側に委ねる)もやもやしたんだけど、
映画とかでも、この方法取る物が多くなり、慣れてきた。
映画「慕情」や「愛人/ラマン」も連想させる。独特の雰囲気の作品でした。