MIHOLO’s 図書室

本と音楽、たまに猫の雑記

しあわせのパン

危険なのは(しあわせなはずが)激しく美味しいパンやスープが飲みたくなること。

 

私の大好きな忌野清志郎さんが矢野顕子さんと歌っている「ひとつだけ」


www.youtube.com

この曲がテーマになっている映画「しあわせのパン」

映画を観たのは随分前だけど、原作も読んだら、もっと好きになった。

 

都会や忙しない環境に疲弊して、癒やされる場所へしばし現実逃避するって話は

結構ある。特にカフェ系は、すごくあるし、私も大好きな種類。

それだけ、みんな疲れているのかな。

 

最初の登場人物、香織の心情。

「自分が何をほしいか、何が好きか、わかっていなかったからなのだ」

そのもがいている姿を応援するトキオ。

「かっこわるい自分を知っている人が、大人だと思います。

もがいたことのある人間じゃないと、幸せはないと思うんです。」

でもトキオも、自分ではもがいてないと思ってる。

誰も彼も自分のことは見えていない。

香織が気づいた思い込み。

「否定されることこそが向上だと思い込んでいた。」なんかよくわかる気がする。

だから認めてもらおうと、向上しなくてはと、擦り切れちゃうんだよね。

 

他の癒し系カフェ作品の主人公とは違い、

この主人公リエと水縞くんには距離と葛藤がある。

その距離を埋めていこうとゆっくり努力しているのじんわりする。

 

映画にはなかった章「カラマツのように君を愛す」が良かった。

カラマツの木は、どんな土地にも根付きやすいとのことから「先駆樹」と言われて、山火事などで消滅した森に、最初に生える木だそうだけど環境が整うとモミなどの樹木に取って代わられ森からほとんどのカラマツが姿を消してしまう。

 

どんな環境や人間にもそこそこ馴染めてしまう自分のようだと

水縞くんはちょっと傷ついてる。

でも、リエさんと通じ合えたあと、自嘲は消えて

自分はカラマツでいいのだ。

それこそがこの世に生まれてきた役割であり道だと納得する。

 

リエさんの過去が描かれていないので想像するしかないけど、

「背伸びもせず、萎縮もせず、自分の信じたものを作り続けていきたい」と

水縞くんに伝えられて、自分自身のためにも声に出せて良かった。

 

3章に出てくる震災で辛い思いをした銭湯のご主人からの手紙の文章が素敵だった。

「どうぞいつまでもお二人が健やかなる精神の中で、

楽しい一瞬を重ねられますようお祈り申し上げます」

 

みんな、自分を照らしてくれるマーニを見つけられたら素敵だよね。