あのひとは蜘蛛をつぶせない
装丁は可愛らしいのに、インパクトある題名になかなか手が出せなかった。
なんとなく、ふんわりはじまるので、この蜘蛛を逃がす柳原さんと
主人公は恋愛関係にでもなるんだろうか?なんて思いながら読み進めるけど
だんだん不穏な空気になっていく。やっぱり、蜘蛛、恐るべし(笑)
そんなふんわり、さわやかにはいかないか。そしてまさかの柳原さんに驚愕展開!
主人公は、嫌なのに離れられない母親との暮らしからなんとか独立したものの
初めての恋愛で爆走し始めた時など、こちら側としてはその母親以上に
心配でハラハラした。
母と娘の関係は難しいけど、ちゃんと育てて貰えたのは良かったんじゃないかな。
読む人の立場で感想が凄く変わると思う。
そう、母と娘の話ってよくあるけど、大人になってから
「そうだよな、お母さんだって最初からお母さんじゃなかったんだもんな」
とふと思った。
子どもからみると、お母さんというのは完成されているものだと思っていたから、
お母さんのくせに!ってよく八つ当たりしてたけど
お母さんになるの初めてだったんだよな。
と思うと、一方通行じゃなくて一緒に育っていくものだったんだと。
私が気になった言葉は、伝えることに関係している文章が多かった。
「言って楽になりたいってだけで余計な事言っちゃいそうだから
もう少し落ち着いてからメールを書きます。」
「むりやり言うとこんがらがって他のものになっちゃうから、言わなくていい」
「なにかをしでかしたとき、ちゃんと謝れたことがないか、
謝っても許されたことがないんでしょう」
「恨まなくたって、その時が来たら恨まれる。
自分が悪くても、悪くなくても、覚悟があろうとなかろうと」
解説が山本文緒さんだった。先に旅立ってしまったのは悲しいけど
作品以外で見つけると、バッタリ会えたみたいで嬉しい。
そして私も蜘蛛はつぶせない。